大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)1165号 判決

上告人

大木佐

代理人

竹沢喜代治

被上告人

東秀太郎

外二名

代理人

田井董

主文

原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人竹沢喜代治の上告理由第一点および第三点(ただし民訴法三九五条一項六号事由の主張を除く。)について。

原判決は、第一審判決に判決の基本となつた口頭弁論に関与しない裁判官が判決をなした違法があるが、控訴裁判所はこれを取り消し差し戻すべきや否やにつき自由に決しうるものであるとの見解のもとに、第一審判決を取り消して自判したものであることは、原判文上明らかである。ところで、右のような違法がある場合でも、第一審判決を取り消したうえ差し戻すかそれとも自判するかは原審の裁量に属する(大判大正元年一一月二六日民録一八輯一〇〇四頁)から、原判決が第一審判決を取り消したうえ事件を第一審に差し戻さなかつたからといつて違法とはいえない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。

同第二点および第三点(ただし、前記の部分を除く。)について。

登記はその記載事項につき事実上の推定力を有するから、登記事項は反証のないかぎり真実であると推定すべきである。ところで、被上告人らの居住しているところが神戸市兵庫区有馬町有馬字峠堂一八〇番の一であることは、右地番の登記簿の附属図面に記載されているところであり、これに基づいて右登記簿は一八〇番の一の面積を当時一二〇坪から388.64坪に更正したものであることは、原審の適法に確定した事実である。そうすれば、反証のないかぎり、被上告人らの占有する本件係争地は一八〇番の一に属し、上告人の所有に属すると推定すべきである。したがつて、右反証のないかぎり、右係争地が上告人の所有に属するとして所有権に基づき被上告人らに対し各占有する土地部分の明渡を求める上告人の本訴請求は理由があることになるので、右反証について更に審理すべきものといわなければならない。これと異なる原判決の判断は失当であり、論旨は理由があり、原判決は破棄を免れないものといわなければならない。

よつて、右反証等について更に審理を尽くさせるため、民訴法四〇七条一項により原判決を破棄し、本件を原審に差し戻すこととし、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(田中二郎 下村三郎 松本正雄 関根小郷)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例